Finale 2009レビュー(2)

 前回のレビューは、2009の記譜機能の大きな変更点である発想記号が中心だったが、今回はその他の機能について行ってみよう。なお、今回もMac版を使ってのレビューなので、システムに依存する部分、とりわけ入出力に関する部分については、機能も含めてWindows版とは異なっている可能性もあることをあらかじめお断りしておきたい。

複数ページにわたる編集が可能
 これまでのFinaleも、複数ページを表示させることはできたのだが、最初のページ以降のページは「見えている」だけであって、決してさわることはできなかった。しかも、複数ページを表示させていると一部の編集操作が挙動不審になるというおまけ付きであった。2009になって、やっと複数ページにわたって自由に編集ができるようになった。


PageView1.jpg

ページをまたいで範囲選択したところ(クリックで原寸表示)


 表示方法は、これまでの単ページ単位での表示に加えて、"Book Style"という、本として綴じた状態で表示させることも可能になった。このスタイルにしておくと、編集時に譜めくりの位置などを意識しやすくなる。


PageView2.jpg

Book Style表示にしたところ。ハンドルがすべてのページに付いている(クリックで原寸表示)


選択ダイアログのサイズ調整機能
 2009からは選択項目に関するすべてのダイアログにズーム機能(虫眼鏡のアイコン)とサイズ調整機能(右下隅)が付加された。この機能によって、特に選択項目の多いダイアログでは、従来のスクロールバーを動かして目的の項目を探す煩わしさからは解放されそうだ。


Selection1.jpg

アーティキュレーション選択画面(デフォルト)


Selection2.jpg

表示枠を拡大し、かつズーム機能で縮小表示してみたところ


機能強化されたFinaleScript 2.0
 FinaleScriptは、Finaleの一連の操作を自動化して作業の効率化を図ることを目的として開発された一種のミニプログラムである。FinaleScriptが初めて搭載された折り、これで楽譜編集時にいつも行うお決まりの単純作業を効率化できるに違いないと心をときめかして研究したものだが、結局のところ、あまりの扱える項目の少なさに落胆してしまった。特に、ラジオボタンやチェックボタンのある対話型ダイアログボックスをまったく扱えないというのは、私にとっては致命的だった。
 今回、2.0としてバージョンアップしたFinaleScriptは、上記の対話型ダイアログボックスを扱えるようになったのが大きな改良点だ。例えば、次のサンプルスクリプトは左右ページのそれぞれの上角にページ番号を振るというものだ。特定のメニュー項目の呼び出しから、ダイアログ中のポップアップメニューからの選択、チェックボックスのチェックのオン/オフ、数値の直接入力などを行っている。


FinaleScript.jpg

FinaleScript 2.0ではスクリプトが構文別にカラーリングされている


 さらに、スクリプトには個別にショートカットキーを割り当てることができるようになったので、従来のようにスクリプトパレットを常時表示させていなくても、ワンキーアクションでスクリプトを実行できるようになった。
 今回の機能強化により、FinaleScriptの実用性は格段に飛躍したと思われる。ただ、いろいろ試しているのだが、まったく呼び出せないダイアログもいくつかあるようで、もう少し検証を進めてみる必要がありそうだ。また、近くリリースされるであろう日本語版でもちゃんと動作するのかもちょっと気がかりなところである。

 欲を言えばきりがないが、現時点ではまだスクリプトを上から順に実行しているだけで、ループや条件分岐はできない。サンプルスクリプトを眺めていると、あるまったく同じ作業を五線の数だけ列挙し、「さらに五線がある場合は以下同文で追加せよ」と注意書きがあるものも少なからず存在する。こういった作業にループ制御ができれば、もっとスクリプトはスッキリしたものになるはずだ。そういう制御を盛り込むとますます複雑になるのでけしからんという向きもあるだろうが、そもそも、こういったスクリプトを自分で組んでみようと考える人は、多少なりともプログラムの経験がある人だと考えられるので、その危惧は当たらないと私は思う。おそらく、そのあたりの機能はFinaleScript 3.0ぐらいには実装されるのではないかと私は踏んでいるのだが、どうだろうか。


自由度の増したソフト音源の扱い
 Finale 2009には、これまでのGarritan KontaktPlayerに代わってGarritan Aria Playerというプレーヤーソフトが付属している。音色では、従来のGarritanの音色にさらにジャズ系、吹奏楽系のいくつかの音色が追加されている。さらに、日本で需要があるのかどうかは不明だが、Tapspace社製マーチングパーカッション専用の音色、Virtual Drumlineもバンドルされている。


AriaPlayer.jpg


 これまでは、Finale付属の音源以外のソフト音源を使ってプレイバックさせるためにはちょっとした特別な設定が必要だったが、2009からはそれらの外部ソフト音源をFinaleから直接制御できるようになった。MIDIデバイス経由ではなく、直接AU(Windows版はVST)を制御することにより、これまでできなかったGarritan音源と外部ソフト音源との共演も可能になった。


AUInst.jpg


 前回のレビューでも書いたが、これまでもFinaleは起動の度にこれらの外部ソフト音源のチェックを行い、多くの音源をインストールしているほど起動に時間がかかっていたのだが、2009からはそのチェックは一瞬で終わるようになった(最初の起動時に一度だけチェックを行って、次回の起動時からは省略しているのかも知れない)。

 これまでは、Finaleに付属のGarritan音源はあくまでFinale専用の特別仕様であり、他のソフトからは使用できなかったのだが、今回付属されたGarritan音源はその制限も撤廃され、他のソフトから使用することも可能になった。マーチング・パーカッション専用の音色などが自由に使えるようになったことは、その手の曲の打ち込みをする人にとっては朗報かも知れない。


DP5.jpg

Digital Performer 5からFinale付属音源をアサインしたところ


Human Playbackの改良
 見た目は、Human Playback初期設定ダイアログのうち「楽器固有の奏法」画面のインターフェイスが若干変わった程度で、他に大きな変化はないが、2009からの外部ソフト音源への対応に伴い、楽器固有の奏法についてそれらとの連系も強化されたようだ。


HumanPlayback.jpg


 その他には、Finaleと同じ開発元の伴奏支援ソフトSmartMusic Accompanimentの書き出し機能の強化というのがあるが、そもそも日本ではSmartMusicそのものがほとんど普及しておらず(もちろん私も持っていない)、この機能については検証のしようがない。
 なんでも風の便りでは、開発元のMakeMusic社は、SmartMusicの日本市場への売り込みを目論んでいるらしい。ただ、かつてSmartMusicの前身であるVivaceというソフトを野中貿易が扱っていたことがあったが、結局日本では鳴かず飛ばずだった。SmartMusicのような伴奏支援ソフトといえば、ジャズの世界では、日本でも既にBand-in-a-Boxが広く知られており、一方、アカデミックな教育現場では、単にコンピュータの扱いに慣れていないという理由もあるだろうが、コンピュータによる伴奏といったものに対して依然抵抗感が強い。現状では、日本市場へのSmartMusic参入はなかなか厳しいのではないだろうか。


 さて、駆け足でFinale 2009のレビューを行ってみたが、今回の2009が「買い」かどうかは判断の分かれそうな部分だ。楽譜編集の部分では、使い勝手の改善は随所で見られるものの、この2009でしか実現できない楽譜表記というものは見あたらない。プラグインもFinaleScriptがバージョンアップしただけで、新たに追加されたものは皆無だ。プレイバックに関する機能拡張も、外部ソフト音源を持たない人や、そもそも楽譜作成のみに専念する人にとっては福音とはならない。これまでのバージョンでずっと抱えていたバグが直っているかどうかも気になるところだが、少なくとも、ここでも取り上げたコーダ切れ後打音のバグを含め、その他の多くのバグも依然解決されないままだ(そのうちリリースされるであろうアップデート版で直っていることを期待したいが......)。
 と書いてしまうと、なんだか2009のネガティブキャンペーンをしているように思われるので一応フォローをしておくが、これまで述べてきたことはあくまで私の個人的な主観であり、いきおい自分にとって興味のある部分とない部分との検証の密度に濃淡が出てしまうのは致し方ないところだ。しかし、私にとって興味を引かれない機能も、他の人にとっては魅力的な機能であるかも知れない。そういう機能が付いたのには、それを熱望した人がいたからに他ならないからだ(あまりフォローになっていなかったな)。
 Finale 2009に興味のある人は英語版のデモ版もダウンロードできるので(おそらく日本語版が出た暁にもそうなると思うが)、試しに使ってみるのもいいかもしれない。ただし、デモ版は付属ソフト音源等に制限があると思われるので、そのあたりはご承知おきいただきたい。

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コメント(8)

こんばんは(^^)。
今回は携帯からの書き込みです。

複数ページでの編集、なかなか使えそうですね。

またごして編集が出来るから、先生のおっしゃるように、譜めくり(ただいま勉強中です)の確認もできますし、大きな編成のスコアなども、一回一回ページを戻すことなくスムースに編集が出来そうです。


しかし、モニターが大きくないと見えづらくなりますよね(^^;


記事の内容とはズレるのですが、先程、神野先生のベートーベンのソナタの楽譜と星出先生のNSBの楽譜を眺めていました。

記譜用フォントは同じものを使われているのでしょうか?

僕の勝手なイメージなのですが、作品の頭のページを見たときに、神野先生の楽譜は柔らかく、星出先生の楽譜はシャープな感じがしました。
(速度記号や、リハーサルマークからのイメージです。)

ずっと見ていても飽きません♪
(楽譜を見る、書くことが好きな変わり者なんです(^^;)
特に、スラーの曲線に惹かれてしまいます。


またまたズレてしまうのですが、先生は山歩きが趣味であると聞きました。

そろそろ、紅葉も見頃になって来ましたよね。

今月の中旬に、登山とまではいきませんが、太宰府のあるお寺(紅葉と枯山水がとても綺麗なんです)に行こうかな、と考えています。

なめ猫さん、おはようございます。

複数ページの編集を有効利用するには大きなモニターが必要になってきます。私は現在22インチのモニターを使っているので快適に表示できますが、ノートパソコンなどで編集している人はあまり恩恵に浴さないかも知れませんね。

>記譜用フォントは同じものを使われているのでしょうか?

神野浄書技研はNew Scan-noteという古いソフトを使って楽譜を製作しており、そこで使われている音楽記号フォントは、かつて私が神野氏と同じ工房で楽譜浄書を行っていたときに、New Scan-note用に私がデザインしたものを今も使っているようです。その音楽記号をFinaleでも使えるように、さらにコンバートし直したものを私は使っています。

>僕の勝手なイメージなのですが、作品の頭のページを見たときに、神野先生の楽譜は柔らかく、星出先生の楽譜はシャープな感じがしました。

それはおそらく紙出力とフィルム出力の違いによる差だと思います。
紙出力は、一旦紙にプリンタ出力したものを写真製版でフィルムに焼き付けるのですが、フィルム出力はイメージデータを直接フィルムに焼き付けます。紙にプリンタ出力すると、どんなに高解像度のプリンタを使っても、紙そのものの表面の凹凸やトナーの飛び散りななどでどうしても輪郭がぼやけてしまいます。その点、フィルムに直接データを印刷する場合はシャープな出力になります。
私も以前は紙出力の版下の方が暖かみがあり、フィルム出力は冷たい印象を持っていました。しかし、最近はDTPの普及によって楽譜もほとんどがフィルム出力されるようになり、シャープな楽譜が当たり前のようになってきたので、慣れてしまいましたね。

先生、こんばんは。


New Scan-note用のフォントだったのですか。
すごく美しいデザインだなあ…とずっと気になっていたんです。

紙出力とファイル出力…

申し訳ありません、打ち間違いがありました。

ファイル出力→フィルム出力

です。

本当に申し訳ありません。
(そういえば、楽譜浄書の部屋の掲示板に昔書き込みさせていただいた時も、こんな軽率なミスをしてしまいましたよね。なんてことをしてしまったんだ…)

Finale 2009 で Garritan のStradivariやGofriller Cello を使うことができるのでしょうか。

ARIAプレーヤー専用とすると、使えないというのが結論になりそうですが、Kontakt Player 2は使えないのでしょうか。

Aria Playerの音色選択メニューには"import"というのがあるのですが、どうやら拡張子が.sfzのファイルしか読めないようです。したがって、Aria Player単体では市販のGarritanサウンドは読み込めないようです(裏ワザがあるのかも知れませんが、マニュアルには"import"についての記述が一切無い)。
ですが、上記のAUプラグインのアサインの画面で、従来のKontakt Player 2もポップアップに表示されていることから分かるように。それぞれを別のバンクに割り当てれば、新旧のプレーヤーの併用は可能です。楽器リストでMIDIチャンネルのアサインを工夫する必要がありますが。

ただ、どうも新旧のプレーヤーを同時にインストールしていると、古いバージョンのFinaleが立ち上がらなくなったりと、不安定になります。うちだけの問題かも知れませんが。

情報をありがとうございます。

2009でもKP2が使えないわけではないのですね。そうするとなんとかStrad Gofrillerは使えるということになりましょうか。

それにしても新旧プレーヤーが完全共存できないのでは、ストレスフリーで使えるというわけには行きそうもありませんね。

いえ、だから、Kontakt Player 2とAria Playerを同時にプレイバックすることは可能です。ただ、Aria Player上から市販のGarritanサウンドが今のところ読み込めないだけの話です。

Aria Playerについてちょっと調べてみたんですが、現在のところ、Aria Playerに対応する市販音源はまだ限られているようですね(GarritanではSteinwayだけかな?)。ただ、従来のGarritanパッケージも順次Aria Player対応フォーマット(拡張子が.sfzのファイル)に対応させていくようなことがアナウンスされているので、そのうちアップデータが出るのではないかと思われます。
ただ、GarritanのStradivariとGofrillerは既に生産中止のようなので、この2点のAria Player対応版はおそらく出ないのではないかと。

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このブログ記事について

このページは、Hossyが2008年10月27日 19:00に書いたブログ記事です。

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