2014年10月アーカイブ

 今回は、頭の隅にでも記憶しておけば、たまには役に立つかもしれないという小ネタである。

切れた複前打音を効率よくつなぐ方法
 Finaleの装飾音符には妙な癖がある。高速ステップ入力で複前打音を入力する際、連桁が自動的につながるときとつながらないときがあるのだ。次の譜例をご覧いただければすぐに気付かれた方も多いと思うが、これは連桁グルーブと密接な関連がある。


GraceBeam1.jpg


 Finaleでは拍単位で連桁グループが形成され、デフォルト状態では連桁は拍ごとに自動的に切れるようになっている。複前打音の装飾音は、連桁グループの内部にある場合は自動的につながるが、連桁グルーブの最初のものはつながらない。小節の最後にある後打音の場合も同様だ。これは明らかに上述の仕様に基づくものと考えられるが、ステップ入力においてはいかなる場合でも装飾音符の連桁は自動的につながるわけで、ここにもFinaleの設計のちぐはぐさがみられる。
 この複前打音の連桁をつなぐためには、高速ステップ編集枠内で「/」キーにてつなぎ直すしかないのだが、その作業が1、2箇所ならともかく、大量に出てきた場合はうんざりだ。これを一発でつなぐ方法はないものだろうか。じつは簡単な方法がある。連桁をつなぎたい部分を選択した後、「ユーティリティメニュー>連桁の再連結>歌詞に従って再連結...」を選択するだけだ。


GraceBeam2.jpg

範囲を選択後、「歌詞に従って再連結...」を開き、そのまま「OK」をクリックする


GraceBeam3.jpg


 ただし、上記の結果をご覧いただけばお分かりの通り、この方法には、拍や連桁グループの設定に関係なく、連結可能な連桁はことごとくつながってしまうという問題がある。ダイアログのオプションにある「拍子記号で設定された拍の切れ目でも連桁を切り離す」にチェックを入れれば済む話ではないかと思われるだろうが、残念ながら、ここにチェックを入れると高速ステップ入力での入力時と同じ判断がなされ、結局状況は何も変わらないのである。
 以上のことから、この方法は、結果的に連桁を切る作業のほうが増えてしまうかどうかを慎重に勘案した上で運用すべきだろう。

 なお、当然のことながら、歌詞が割り付けられている音符については、本来の機能どおり、シラブルに従って連桁が切断されてしまう。もっとも、このような複前打音が多量に使われる歌曲はあまりないと思われるし、あったとしても、装飾音符にまでシラブルが振られることは通常考えられないので、運用上の問題はないといって差し支えないだろう。


切れたままの2、4拍目の連桁
 上記に関連してもうひとつ小ネタを。
 「ファイル別オプション - 連桁」の「4分の4拍子で8分音符4つを連桁で連結する」にチェックが付いていても、その連桁グループに1つでも装飾音符が含まれていると、ステップ入力、高速ステップ入力にかかわらず、このオプションは無効になってしまう。どうやら、Finaleは装飾音符が絡むと、拍単位の連桁のグループ化を優先するらしい。


GraceBeam4.jpg


 特に、2、4拍目頭に装飾音符がある場合、高速ステップ入力にて、2、4拍目にカーソルを置いて「/」キーをタイプしても連桁はつながってくれない。「ユーティリティメニュー>連桁の再連結>指定する拍子によって再連結...」にて2/2拍子にして再連結をしてみても同様である。


 じつはこの場合、2、4拍で「/」キーをタイプしたのち、その直前の装飾音符上で「/」キーをタイプしてやっと連桁がつながるのである(順番はどちらが先でもよい)。つまり、内部的には、連桁グループ内の装飾音符を含むすべての音符の「連桁接続フラグ」をオンにしなければ、連桁はつながらないのである(※注)


GraceBeam5.jpg

矢印の2箇所で「/」をタイプしないと連桁はつながってくれない


GraceBeam6.jpg


 ただ、この方法の問題点は、片方の「連桁接続フラグ」をオンにしただけでは何の変化もなく、どちらのフラグがオンになっているのかは画面上では確認できないことである。この方法が分かりにくければ、装飾音を挟んだ両方の音符の範囲を選択し、冒頭で示した「歌詞に従って再連結」を利用したほうが堅実である。

 これは、Finaleの分かりづらい仕様の1つで、実際、つなぎ方が分からなかったのか、はたまた単なるずぼらからなのか、2、4拍目の連桁が不自然に切れたままの楽譜をしばしば見かける。このようなユーザーを困惑させるような仕様は早急に改善して欲しいものである。



※注 この仕様のせいで、逆に、連桁グループ内の複前打音を部分的に切ることはできない(一部を切ると同時に親音符の連桁も切れてしまう)。稀なケースだが、次のような楽譜は通常の入力方法では書けない。


GraceBeam7.jpg

この譜例では、装飾音のみボイス2で入力することで表現している

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