Intel Macと相性の悪いプラグイン

※ 11/3/22に記事追加

 Finaleは2007からIntel搭載のMacにも対応したUniversalアプリケーションとなった。ところで、最近の大規模なアプリケーションソフトは、本体とそれに付属するプラグインと呼ばれる小さなアプリケーションとで構成されているものが多い。それらはそれぞれ独立して開発されていることも多く、本体が新しいOSに対応していても、個々のプラグインの対応の足並みが揃わないという状況もしばしば発生する。
 Finaleの場合、プラグイン項目に入っている物の他、一見本体の機能のように見えるスキャナ読み取り機能やHuman Playback機能等も、じつはプラグインで供給されているものである(Mac OSならアプリケーション本体を「パッケージの中身を表示」で覗くとわかる)。実際、2007がリリースされた当初、スキャナ読み取り機能がIntel搭載Macに対応できていない旨のアナウンスがあった。

 さて、前置きが長くなってしまったが、じつは2008にも問題の生じるプラグインが残っている。そのひとつは「コーダ切れの作成」プラグインである。

 Intel搭載Macでこのプラグインを使ってコーダ切れを作ろうとすると、とんでもないレイアウトになることがある。使用する場所によっては、一見まともに機能しているように見えることもあるが、その場合でも、分断された左右の組段のバランスが正確にレイアウトされていないことが多い。


coda1.jpg

コーダにしたい冒頭の小節を選択して「コーダ切れの作成」プラグインを適用すると......

coda2.jpg

とんでもないレイアウトになってしまった

 こうなってしまっても、レイアウトツールでドラッグして修正することは可能であるが、そんな手間がかかってしまうのでは、そもそもこのプラグインを使う意味がない。
 このプラグインをまともに動作させたければ、FinaleをRosettaモード(PowerPC互換モード)で立ち上げるしか方法はない。手順は以下の通り。

  1. 一旦Finaleを終了する。


  2. coda3.jpg
  3. FinderにてFinaleアプリケーション本体を選択し、「情報を見る」にて、「Rosettaを使って開く」にチェックを付けてダイアログを閉じてからFinaleを起動させる。このとき、チェックを付けただけでダイアログを閉じないままFinaleを起動しても、Rosettaモードに切り替わっていないので注意。

  4. プラグインを使い終えたらFinaleを終了し、上記のチェックを外して再度Finaleを起動する。 

 他のプラグインでは、「作曲支援ツール>共通音にタイをかける」がまったく動作しないことが確認されている。これもRosettaモードで起動すれば使用可能になる。

 それなら、いっそのことFinaleはつねにRosettaモードで使用すればいいじゃないかと思われるかもしれない。しかし、Rosettaモードでは、今度は「ページレイアウト・ツール」の「ページ・マージン編集パレット」と「組段マージン編集パレット」を表示させることができないというバグが確認されている。それと、Rosettaモードでは、Intelの特性を活かしたパフォーマンスは引き出せないことも覚悟する必要がある。
 Intel Macユーザーは、これらのプラグインを使いたいときだけ、Finaleを起動しなおさなければならない煩わしさがあるが、現状では仕方がない。

 Finaleに限ったことではないが、使用頻度の少ない機能のバグは長年放置されるきらいがある。2007で発生した「コーダ切れの作成」のバグが2008でも放置されているということは、このプラグイン自体が2006でやっと搭載されたという事実から鑑みても、あちらではあまりコーダ切れって需要がないのだろうか? たしかに、あちらの楽譜では、コーダ部の五線を切らずにそのまま続けて書かれてあるものも多い。しかし、ライバルソフトのSibeliusでは、最初のバージョンからコーダ切れの機能が標準搭載されていることから(しかも、こちらの仕様の方が断然実用的!)、需要がないわけではなさそうだ。
 とある情報筋によると、もともとMacのソフトだったFinaleも、現在は世界的に見てもWindowsユーザーの方が圧倒的に多く、最近のソフト開発はWindowsが優先で、Macは後回しなのだという。シェアの少なさに加えてUniversalアプリケーションへの対応、バグ放置の原因はこのあたりにありそうだ。



11/3/22に追記

 Finale 2011でこのバグはやっと解消された。メデタシメデタシ。ただし、リンク・パートでこのプラグインが使えない問題は改善されず......残念。

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コメント(6)

先日もちょっとお話ししましたが(笑),このプラグインは,リンク状態のパート譜で使えないというのが一番アホだと思います。
TGツールなどは,リンク・パートでもしっかり機能しているので,パート譜だと必ずしもプラグインが使えないということもないでしょうに……。

KKさん、どうもです。

まあ、今回はIntel Macでのバグというお題目だったので、そのあたりはスルーしていたのですが。リンク・パート上の問題の方は「ここがダメ!」カテゴリあたりでじっくりメスを入れていこうかと。
というか、Finaleの「コーダ切れの作成」は根本的に発想が姑息です。一旦コーダ切れを作ると、「組段の均等配置」も使えなくなるし、段間調整も面倒ですからね。記事でもチラと触れていますが、コーダ切れの仕様に関しては完全にSibeliusの勝ちです。

ああ、「Finaleのここがダメ!」カテゴリの肥やしになっていくなあ……(笑)。

この問題は、実はWindows版では2006の最初の時から生じていて、未だに引きずっているんですよね。
今回、Intel Macで新たにMac版でも生じるようになったと言うことは、Intel CPUの演算結果を正しく利用できていないような気がしているのですが。

どちらにしても、このプラグインが中途半端な仕様であることは、2006当時のベータテストに参加していたときから指摘していて、せめて現状の仕様を大きく変えずに実現するのであれば、コーダ切れの部分に空小節を挿入・幅調節して、そこを楽譜スタイルで隠してしまうのを提案しているのですが、複数五線がある場合に左小節線と五線括弧(大譜表括弧など)をそこに表示できないため、いまだ実現されないようです。

skmtさん、いらっしゃいませ。

ということは、Windowsを使っている人は、この「コーダ切れの作成」プラグインはまともに使えた試しがないと言うことですか? しかし、そんなものをのうのうと付属し続けているということは、クレームがほとんど来ていないのでしょうかね?
ちなみに、最新版2009のデモ版をダウンロードして試してみたところ、やはりレイアウトがメチャクチャになるバグは再現しています。MacもIntel製が主流になりつつある現在、欠陥品を付属させ続けるとは、MM社もなかなか良い根性です(笑)。
でも、このバグ、X座標が予期せぬ値になる症状から、単純に座標の計算中に数値のオーバーフローを起こしているような感じですけどねぇ。計算結果をトレースしていけば、原因は容易に掴めそうな気もするのですが。

コーダ切れの憂鬱の記事でも触れていますが、あくまでひとつの組段内でコーダ切れを表現するには、データ構造を根本的に変えなければ難しいのではないでしょうか。こればっかりはSibeliusに軍配が上がります。

このプラグインをそんなに毎日使っているわけではないですが、頻度は30%くらいの印象です。必ず毎度というわけではないですが、崩れるときは崩れる、と。
不思議なのは、このプラグインをそのまま流用しているPrintMusicでは症状がでないんですよね。
なので、原因はプラグインの方ではなくて、プログラム本体にあるようです。

まともに動作することもある、という症状がまさに演算時のオーバーフローの有無に合致するのですが、まあ、私がそれを詮索したところで仕方ありませんね(笑)。

PrintMusicって、中身は機能制限したFinaleそのものなんでしょう? 原因がプラグインでなくアプリ本体にあるとすれば、そういうことってあるんですかねぇ。なんだか結構根は深いような気がします。
Finaleの方は往時の16bitか32bit時代のソースが未だに使われているとか……まさかね(笑)。

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このページは、Hossyが2008年7月19日 18:00に書いたブログ記事です。

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