2011年4月アーカイブ

※ 11/10/20に記事追加

 Finaleがバージョンアップされる際には、それまでのバージョンが抱えていたおびただしい数のバグも修正されていることが多いのだが、一方で機能の強化や変更が思わぬバグを誘発させることもある。こういったバグはユーザーがある程度使い込んでから発見されることも多く、バージョンアップ後の比較的初期段階に見つかったものについてはマイナーアップデートで対応されることも多いが、対応しきれなかったバグについては次のバージョンに持ち越されることになる。
 現在Windows版は2011b、Mac版は2011cまでのアップデータが配布されているが、海の向こうの開発元は既に次期バージョン2012のベータテストを開始している時期であり、この時点でこれ以上の2011のアップデータが出る可能性は低い。現時点で確認されているバグについて以下に挙げておこう。


日本語歌詞が正しく割り付けられないバグ
 舶来ソフトの宿命とも言えるFinaleの日本語環境固有のトラブルは今日に始まったことではないが、今回もそんなバグが発生している。
 Finale 2011レビュー(1)でも既に触れたが、2011からリニューアルした歌詞編集ウィンドウ内に日本語歌詞を書いた場合、歌詞の途中から「クリックで割り付け」にて割り付けようとすると、カーソルを置いた文字とは異なる歌詞が割り付けられてしまう。このバグについては、日本語版がリリースされてから早期にユーザーからクレームが来たらしく、早速イーフロンティアのFAQにも報告されている。


2011bug1.jpg

歌詞編集ウィンドウ内の「さ」の位置にカーソルを置いたはずなのに、
音符をクリックするとそれより前方の「き」が割り付けられてしまう


 日本語ばかりの歌詞を入力している場合、実際にタイプされる文字は歌詞編集ウィンドウ内のカーソルを置いた文字より冒頭からおよそ2/3の位置の文字が割り付けられることに気付いた人もいるだろう。なぜこのようなことが起こるのか。
 日本語の部分は内部的には2バイトの文字コードで表現される。Finaleの歌詞ではひとつのシラブル(ひとつの音符に割り付けられる歌詞)に所属する文字は、通常日本語1文字+区切り記号の半角スペースキャラクタの計2文字なのに対して、文字コードは3バイトが割り当てられることになる。もうお分かりかと思うが、Finaleは歌詞編集ウィンドウ内では文字数で勘定をしているのに、実際に割り付ける文字は文字コードのバイト数で勘定をしているのだ。上記の例では「さ」の冒頭からの文字数が21番目なのに対し、21番目の文字コードは「き」の次の半角スペースにあたり、そのシラブルに所属する「き」の文字が割り付けられたという按配である。これは、クリックを続けていくと、歌詞編集ウィンドウ内のハイライト部分が実際に割り付けられる文字とだんだんずれていくことからも分かる。その結果、上記の歌詞編集ウィンドウでは、スペースキャラクタを挟んだ2文字分がひとつのシラブルとしてハイライトされてしまっている。


2011Bug2.gif

Finaleの日本語歌詞の文字表現


 上の例では分かりやすくするために、ひとつのシラブルにつき1文字が対応するものとして説明をしたが、実際の歌詞では「しょう」などのように1つのシラブルに複数の文字が割り当てられたり、1バイト文字の欧文歌詞が混在することもあり、事情はもっと複雑である。それでもこの文字コードの仕組みを踏まえれば、正しい文字が割り付けられるよう歌詞編集ウィンドウ内でカーソルを置く位置を逆算で求めることも不可能ではないが、そもそも歌詞をタイプする度にそんな不毛な計算を強いられるのはナンセンスである。結局日本語歌詞を書く場合、イーフロンティアのFAQにも書かれているとおり、「クリックで割り付け」機能を使う場合は歌詞の先頭から順番に割り付けていくか、歌詞編集ウィンドウを使わずスコアに歌詞を直接タイプするしかない。
 文字数と文字バイト数が完全に一致する1バイト言語圏において、開発者がこの2バイト文字のことを全く考慮しなかったことは致し方ないところだが、こういうトラブルが起こる度に日本のユーザーは割を食うことになる。Finaleも、そろそろ言語環境に左右されないUnicodeへの対応に本格的に取り組んで欲しいものだ。


「符頭の変更」にて一部のキャラクタが変更できないバグ
 選択した範囲の特定の符頭を一括して変更するには、「ユーティリティ>変更>符頭の変更...」を使う方法が効率的だが、ここで「選択した符頭:」にスロット番号130以降のキャラクタを指定すると、変更されず無視されるか、または意図したものとは異なるキャラクタに変更されてしまう。符頭キャラクタは後半のスロット番号に多く含まれているので少々厄介である。


2011Bug3.jpg

#130以降のすべてのキャラクタ(ハイライト部分)は正しく変更されない


 代替策としては以下の2通りが考えられるが、いずれもユーティリティーにある符頭変更機能を完全に代用できるものではないことに留意する必要がある。

  1. 「プラグインメニュー>音符関係>符頭の変更...」を使う方法。なお、こちらの方法では選択範囲の符頭を種類に関係なく一括して変更してしまうので、選択範囲の2分音符のみを変更したいといった用途には使えない。その場合は2.の方法を検討していただきたい。

  2. 「道具箱ツール」の「符頭変更ツール」か「符頭微調整ツール」を使う方法。なお、こちらの方法では1小節単位での編集しかできないという制約がある。

 どうやら英語版ではこのバグは発生しないようなので、こちらも日本語環境が影響している可能性が高い。

 その他、2011以前よりずっと放置されたままのバグも結構残っている。さらに新たなバグが発見された場合はここで追加報告したい。



11/10/20に追記

 Finale 2012で上記のバグはすべて解消された。メデタシメデタシ。

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