しばらく多忙で更新ができなかったのだが、その間にもネタは着実に集めていたので、そんな中からちょっとした小ネタを紹介しようと思う。
今回はどちらかというと楽譜出版業者に読んでいただきたい、DTP寄りの話である。
Finaleは欧米のソフトなので、当然のことながら日本語固有の組版処理には対応していない。タイトルなどで仮名が続く場合や約物が含まれる場合、Finaleでは文字詰め処理が全く行われないため、文字間が無駄に空いてしまうことがある。「ちゃんと読めるし別に問題ないじゃないか」という人もいるだろうが、それはあえて例えるなら、テキストエディタで作成した文章をそのまま版下として出版しているようなものであり、商用印刷に携わっている者から見れば看過できない部分である。
もっとも、Windowsに付属のMS P明朝などのプロポーショナルフォントを使えば、もとよりフォント自体が文字幅情報を持っているので、普通にタイプするだけで適切な文字詰めが行われる。しかし、Mac OSに付属のヒラギノをはじめ、一般的な日本語フォントはモノスペース(等幅)になっているので、このような文字詰めは行われない。
本格的なDTP環境を備えていれば、専用のページレイアウトソフトに楽譜部分のみを貼り付けた上で、曲のタイトルなどは、そのページレイアウトソフトの文字組み処理を施して記入するのが一般的だろう。しかし、そのような環境を持ち合わせていない場合や、そこまで時間をかけたくない場合、Finale上で何とかならないものだろうか。
Finaleには文字メニューに「文字間調整」という機能がある。ただし、この機能を使って文字の一部分の間隔を調整しようと思っても、連続してひとつのフォントで書かれている文字列全体の間隔が変わってしまう。これは、もとより欧米のアルファベットはフォント自体がプロポーショナルに設計されているので、少なくとも楽譜制作ソフトレベルで文字単位での間隔調整を行う必要性はないと判断されたものと考えられる。
それならば発想を逆転してみよう。一番詰めたい部分の文字間隔をあらかじめ全体に設定しておき、文字が詰まりすぎた部分に任意の半角スペースを挿入することで調整してしまえばよいのだ。
なお、ここで注意すべきポイントがある。
文字間隔に負数を指定すると、その値の分だけ文字は重なることになる。ここでスペースをタイプして広がる間隔は、半角スペースの文字幅から重複部分を引いた値となる。
例えば、Mac OSに付属のヒラギノ明朝の場合、半角スペースの幅は333(/1000em)なので、文字間隔に「-333」を指定すると、差し引き「0」となり、いくらスペースをタイプしても文字間は変わらなくなる。さらに、文字間隔に「-333」より小さな数値を指定すると、半角スペースの幅より重複部分のほうが上回るので、スペースをタイプすればするほど文字間が縮まってしまうという逆転現象が発生する。したがって、この重複部分の幅としては、そのフォントの半角スペースの文字幅より小さな値を設定する必要がある(実際はその値の反数)。
半角スペースの文字幅はフォントによって異なるので、もし、スペースをタイプしたとき、逆に文字間が縮むようなことがあれば、それは文字間隔の値が大きすぎたということになる。
以上のことを踏まえて、適切な文字間隔の値を設定し、それぞれの文字間を手動でスペースを挿入することで調整すれば完成である。この処理をするだけでも、タイトルの見栄えはずいぶんよくなるはずである。
ところで、日本語歌詞を入力しているときにもシラブル中の文字間を詰めたいときがある。しかし、Finaleの歌詞機能では、この文字間調整機能が使えないようになっている。
これも、基本的に歌詞のシラブル中の文字間を調節する必要性がない文化圏で設計されたソフトの仕様なので、ある意味仕方のないことである。このケースでは、歌詞機能で書くことをキッパリあきらめ、文字間隔調整の行える文字発想記号で代替するしかない。
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