2012年6月にリリースされた無料のiPad用ビューワーアプリ、Finale SongBookが人知れず公開を終了していることが分かった。
現在、App StoreでFinale SongBookを検索しても、「お捜しのアイテムは見つかりませんでした」と表示される。本家MakeMusicのサイトからは、すでにSongBookに関する情報が削除されている。この原稿を書いた時点では、まだ国内販売元のMI7のサイトにはFinale SongBookのページが存在しているが、もちろんそこからもダウンロードはできないし、ページ自体いずれは削除されることになるだろう。
このFinale SongBookの公開終了については、MakeMusicは積極的なアナウンスはしていないが、サイト内のFAQにて「Finale SongBookはどうなってる?」という問いに答える形でコメントを発表している。要約すると、以下のようになる。
──Finale SongBookのリリース以来いろいろな状況が変化し、現在のiOS 8での使い勝手はとても満足できるものではないことから、我々はFinale SongBookをApp Storeから削除することにした。今後、Finale SongBookという形でのアップデートの予定はないが、将来、iPadのようなモバイル端末で楽譜を共有することへのニーズに何らかの別の形で応えたい。──
私はiPadそのものを持っていないので、Finale SongBookの具体的な使用感を評価できる立場ではないのだが、周囲の実際に使った人やネット上での感想などを見る限り、このアプリを有効に活用しているといった話はとんと聞かない。実際のところ、演奏に使うには楽譜表示が小さすぎるし、表示専用ソフトということで入力や編集機能は持ち合わせてなく楽譜製作にも使えない。頻繁に落ちて不安定という話も聞く。そもそも無料版として配布していたことからも、もとより商品として展開する予定はなく、MakeMusicの原文コメントの冒頭にもあるように、モバイル端末での楽譜表示の研究のための試作品といった位置付けだったのだろう。
メロ譜やピアノ譜程度ならともかく、タブレット端末の限られた大きさの画面は大編成のスコアを見渡すには不向きで、楽譜製作はまだしばらくはパソコンでの作業が続くだろう。しかし、この時代、作曲家が出先で思いついたフレーズをスマホなどにメモしたものを、Finaleとシームレスにリンクするといった使い方ができて然るべきであり、その気になれば、Finaleの「マイク採譜」エンジンを使って鼻歌や口笛を記譜することも可能のはずだ。おそらくそういった要望はすでにMakeMusicにも届いていて、彼らもその実現を視野に入れているはずである。
今後、Finaleとモバイル端末とのより実用的な連携をどう打ち出してくるか注目していきたい。
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