私を含め、楽譜の版下製作に携わっている者は他人の作成したFinaleデータを編集する機会が非常に多い。Finaleによる版下製作はDTPとの連携の良さからほぼ100% Macintosh上で行われているのが現状だが、世の中全体から見ればFinaleユーザーはWindowsユーザーのほうがはるかに多く、版下製作の現場でも必然的に彼らのデータも扱うことになる。
Finaleでは同じバージョンのファイルであれば、OS間の互換性は完全に保たれているはずなのだが、フォントなどのシステムに依存する部分に表現の差異があり、とりわけ日本語環境下でのOS間のファイル交換時には、これまでもいろいろなトラブルが発生していた。
最近、Windows版Finaleで作成されたファイルをFinale 2011で開き、発想記号を貼り付けようと楽譜上をクリックした瞬間にFinaleが強制終了してしまうというトラブルをしばしば耳にすることがあり、実際、私も体験した。
これについていろいろ原因を調べてみたところ、発想記号カテゴリに日本語名の新たなカテゴリが追加されている場合に発生しやすいことが判明した。どうやら、このカテゴリ名をコンバートした際に文字コード変換ミスが発生してしまうようで、発想記号カテゴリ名のリストが表示されるダイアログであれば、「発想記号の選択」の他にも「発想記号カテゴリの設計」ダイアログを開こうとした場合にも強制終了してしまう。ためしに、変換ミスが発生したカテゴリの発想記号をコンテクストメニューから開いてみると、カテゴリ名が文字化けしていることが分かる。
この症状が発生した場合は、「プログラム・オプション - 開く」内の、「テキストのコンバート:他のOSからのファイルの欧文特殊文字を自動的にコンバート」のチェックを外そう。この設定でファイルを開き直せば強制終了は発生しなくなる。
このオプションは、Windows版で作成されたファイルのテキストに含まれる「ö」や「ù」等のアクセント付き文字を正しくコンバートするために設けられたものだが、一方で発想記号の注釈や楽譜スタイル名が文字化けしてしまうという副作用も発生する(これはFinale 2012では解消されている)。元のファイルにドイツ語やフランス語などのテキストが大量に含まれているというケースでもなければ、ここのオプションは基本的にオフにしておいたほうが良さそうだ。
今回の記事はMac版2011のみに発生するトラブルということで、すでに2012がリリースされて半年近く経つ現時点の記事としては少々旬を外している感もあるのだが、楽譜版下製作の現場では未だに2011が多く使われており、じつは先日もネット上でこのトラブルが話題になったくらいである。イーフロンティアの旧FAQやMI7のFAQにもこのトラブルの情報は上がっていないようなので、この記事が同じトラブルに遭遇したユーザーの手助けになれば幸いである。