TIPS : 2013年7月アーカイブ

 Finaleには現在80近いプラグインが付属しているが、みなさんはそれらを有効に使いこなしていらっしゃるだろうか。Finaleのセミナーでの質問コーナーや、私が併設している「Finale よろず掲示板」などで、「このプラグインを使えば簡単にできますよ」とやると、「えっ、そんな機能があったんですか!?」とユーザーに驚かれることも少なくない。もちろん、Finale本体の機能と同様、すべてのプラグインの機能を完全に掌握することは不可能だし、その必要もないわけだが、知っていると知らないでは楽譜制作の能率が大きく変わってしまうことも事実である。今回は、そんなプラグインの中から意外と存在を知られていないものを紹介してみようと思う。


 プラグイン・メニューの「作曲・編曲関連」の中に「作曲支援ツール」という一連のプラグイン群がある。これらはIRCAMという音楽機関(詳しくはWikipediaの項目を参照されたい)が開発したものだが、「メロディの変容」とか「周波数変調和音の生成」などの名称からも窺えるように、多分に実験的なもので、これらのプラグインを実際に利用したという人はほとんどいないのではないだろうか。
 そんな特殊なプラグイン群の中にも、工夫次第で一般的な楽譜制作にも有効に使えるものがある。そのひとつが今回紹介する「共通音にタイをかける」プラグインだ。機能としては、選択範囲でタイのかけることのできる音符、すなわち同音が続いている部分を探し出し、それらにあまねくタイをかけるというものである。
 たとえば、次のような楽譜を入力する時、1音毎にタイをかけるのは結構骨の折れる作業である。このようなケースでは、とりあえず音符だけを入力しておき、選択範囲を指定してプラグインを使って一気にタイをかけたほうが手っ取り早いし、なにしろタイのかけ損じを防ぐこともできる。


CommonTies1.jpg

タイの向きや形の調整は自分で行う必要がある


 「なんだ、その程度のことにしか使えないのか、期待はずれだ」とおっしゃる方もいそうなので、別の例を紹介しよう。これは白玉系のハーモニーセクションをアレンジする場合に有効である。


1. まず、トップのパートに和音をまとめて入力する。

CommonTies2.jpg
2. ユーティリティ・メニューにある「和音の分散」機能を使って、各パートに振り分ける。

CommonTies3.jpg
3. 全体に「共通音にタイをかける」プラグインを適用する。

CommonTies4.jpg
4. さらに、ユーティリティ・メニューにある「小節線の引き直し」を行うと、タイの音符をまとめて表記しなおしてくれる。

CommonTies5.jpg


 なお、4.については「採譜の再実行」を行っても実現できるが、そちらは一旦MIDIデータの状態にして楽譜の解釈をしなおすので、異名同音の表記が変わってしまう可能性があるほか、クォンタイズの設定によっても結果が左右されてしまうので注意が必要だ。
 一般的に「小節線の引き直し」機能は、音符を拍とずれて入力してしまったり、拍子を変更した際に小節とのつじつまを合わせるために使われるものだが、プラグインとの組み合わせでこういった使い方もできることを覚えておくとよいだろう。

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